全米売り上げNo.1*ナチュラルソープ(*SPINS社調べ2000年~2019年)として知られるドクターブロナーの「マジックソープ」は、1948年にアメリカで誕生した。保湿成分として、泡立ちの良いココナッツオイルやなめらかさを生むオリーブオイル、整肌成分として肌を潤すヘンプオイルなど、それぞれ異なる特長をもつ有機植物油の特性を理解し、独自の配合のもとにブレンドしてつくられる同製品は、時代を追うごとに愛用者を増やし、消費におけるエコロジー志向を牽引するベンチマーク的存在となる。驚異のロングセラーという観点からも注目に値するだろう。
創業者のドクターブロナーことエマニュエル・ブロナーは1908年、ドイツのユダヤ人街にある石鹸メーカーの子として生まれた。21歳で渡米し、石鹸メーカーに勤める科学者として活躍している最中に、第二次世界大戦が勃発。あろうことか、ドイツに残した両親をナチス政権のホロコーストによって失うという悲劇に見舞われる。
このショッキングな事件を受けてエマニュエルが提案したのが、のちの企業理念へとつながる「オールワンビジョン」。世界平和と宗教や民族の差別のない結束を唱える崇高な思想であった。
創設者のエマニュエル・ブロナー
「創業者だった曾祖父のエマニュエルは、両親の死を知って怒りに震えることも天を呪うこともできたはずです。しかし代わりに彼は、愛のメッセージとしての『オールワンビジョン』を提唱し、戦後、全米各地でそれを説いて回りました。そして、講義を聞いてくれた人たちへのお礼として、自らのつくったオーガニックソープ『マジックソープ』を配ったのです。持って帰ってくれた人たちにきちんとメッセージを伝えるために彼が考えた手段が、製品のラベル全面にこの『オールワンビジョン』を表記することでした。以来70年間、我々の主力製品である『マジックソープ』のラベルには、この『オールワンビジョン』が示されているのです」
ドクターブロナーのロングセラー商品として世界中に愛用者をもつ「マジックソープ」。天然由来成分100%のオーガニックソープのラベルには、創業者が唱えてきた「オールワンビジョン」が表記されている。
そう語るのは、創業者の曾孫にして5代目社長を継承するマイケル・ブロナー。創業者の意思を継いで「愛を広げることが最優先、利益は二の次」と言った叔父ラルフ・ブロナーの言葉を着実に実践しながら製品の販路を広げ、同社の飛躍的なグローバル化を牽引した人物だ。世界各国を旅するなかで、外国語指導助手として日本に暮らし、英語を教えた経験の持ち主でもある。
マイケル・ブロナー。2015年に社長就任後、販路をヨーロッパ、中東、日本を含むアジア、オセアニア地域などの海外に拡大し、グローバルブランドに育て上げた立役者。結果、海外市場での売上げを全体の1%から20%へと急成長させた。
「通常、企業が製品をつくるときはまずマーケット調査ののちに製品が開発され、次にパッケージがデザインされます。でもドクターブロナーという会社はミッションファーストで設立されました。『オールワンビジョン』をラベルで伝えるという目的が先に来ていたのです。私はよくSOAP & SOUL=『石鹸と魂』という風に表現していますが、優れた製品であることは当然で、それよりもいかに人や地球に対する愛を伝えられるかという魂の部分に注力しています」
石鹸という限られた製品の製造販売を通じて、どうやって愛を伝えるのか?と問うと、マイケルはさらにこう言葉をつないだ。
「私たちは石鹸を主力製品としていますが、その事業は大きな枝葉を広げてあらゆるものに影響を与えています。例えば私たちは、原料となるさまざまな有機植物油を世界各地の農家からフェアトレードで購入するため、農家に、農業に、その国と地域の環境と発展に影響を与えます。お客様のことを心から考えた製品をつくることで、お客様に健康と感動を与えます。同じミッションのもとに働いてくれる従業員たちに給与を支払うことで、従業員の生活の基盤を築きます。製品が世界各地で使われることで、地球環境に影響を与えます。
そうした大きく波及する輪を意識すると、当社の製品は自ずとフェアトレード認定やオーガニック認証、ほかにもUSDA、B Corporation認証、ROC認証など、考え得る限りのあらゆる認定を取得していくことにつながりました。生産工程におけるゼロエミッションの実現から、ボトルを100%リサイクルプラスチックでつくることなど、サステナビリティへの取り組みは言うまでもなく、従業員に対するケアも忘れていません。我々の会社では、従業員たちを『家族』と呼び、管理職の給与を工場の最低賃金労働者の5倍までに抑えて、その代わりにすべての従業員の健康保険を優先して医療給付機構プランに拡充しています。ほかにも、会社の運営に必要な経費以外の利益をさまざまな慈善団体に寄付しています。サステナブルな企業であるために、私たちはSDGsの言葉が生まれるよりはるか以前から、こうした取り組みを続けてきたのです」
気候変動に抑制をかけるために、ドクターブロナーは原料となるココナッツやミントの栽培をROC(リジェネラティブ・オーガニック認証)農業に移行。土壌の再生に取り組んでいる。
常に、地球にとっても人々にとっても最高であることを目指して──マイケルは、自社の在り方を「ベネフィット・コーポレーション」という言葉で説明してくれた。
「我々はずっと、株主に利益を還元するだけでなく、社会的・環境的目標も重要視できる企業を目指してきました。それができてきたのは、家族経営の会社だったからという理由もあるかもしれません。私の兄はCEOであり、義理の兄はCOO、母はCFOです。心は同じ場所にあるために、強い行動力とともに迅速な意思決定を強みとします。今年は世界中がコロナ禍に襲われましたが、我々は天然由来成分100%のオーガニック除菌スプレー製品を少しでも多く届けられるよう、心をひとつにして取り組んできました。裕福な人々だけが安全な暮らしができるということがないように、低所得者層に届けてくれる慈善団体に支援金を寄付してきたほか、病院や消防署、警察署にも寄付をしています。そして、そうした行動力の源となる我々家族の結束が、同じく『家族』と呼ぶ従業員たちの間にも浸透していることも確かです」
オーガニッククリーンスプレー(ペパーミント)。水を除く95%以上オーガニック原材料を使用した製品に与えられる食品レベルのUSDAオーガニック認証を取得。スプレーしてふき取るだけで99.9%の除菌*が可能(*すべての菌を除菌するわけではありません)。
家庭では7歳の男児と4歳の女児の父親でもあるマイケルは、常に利他主義に通じる謙虚な心構えを説いているという。
「7歳の息子は、科学者になって、早く私と一緒に働きたいと言ってくれています。いつも、『ドクターブロナーでこんなものをつくろうよ!』と驚くような発明を考えては、私に話してくれます。彼には常々、安全で優れた原料を提供してくれる農家や従業員たちに対する感謝の想いと、彼らに対する責任について話して聞かせています。『みんなに順番に食べさせてあげよう。君が食べるのは最後だからね』といった話です。
会社として、我々の責任は子どもたちのためにもこの地球環境をより良くし、そこに暮らす人々をより幸せにする手助けをしなければなりません。大きな脅威となっているのは二酸化炭素の増加に伴う地球温暖化であり、解決のためにはこれまでの価値観を覆すような思い切った解決策が必要です。私たちは大手アウトドアブランドのパタゴニアと、アメリカのロデール研究所とともに解決の糸口を研究しています。ドクターブロナーは今日の世界で人々のために経済活動を行いながら、また同時に世界を修復するための脱工業化の方策も模索しなければならないのです」
ドクターブロナーはパームオイル、ココナッツオイル、オリーブオイル、ミントオイルなどの主要原料の各産地で、農薬や化学肥料を使わない持続可能な農業を支援。また労働者の健全な労働条件を約束しているほか、学校や病院を設置するなど地域コミュニティにも資金を提供している。
インタビューの最後に、マイケルはForbesの読者に向けてこんなメッセージをくれた。
ドクターブロナー5代目社長マイケル・ブロナー
「ドクターブロナーは、2000年次の売上高500万ドルを、20年の間で1億7千万ドルにまで成長させることができました。その秘訣は、利益優先ではなくミッション優先の姿勢を一貫してとり続けてきたことです。私たちはいまも昔も人類、そして地球への愛から、そして世界平和と宗教や民族の差別のない結束を唱える『オールワンビジョン』の実現のために企業活動を行っています。たかが石鹸と思われるかもしれませんが、共感してくれる世界中の生産者と、顧客と、そして従業員たちとの間に、家族にも似た素晴らしい絆を築いてきました。あらゆるステークホルダーをつなぐ共感の輪が、ドクターブロナーというブランドを育てたのです。皆さんも、自身のために、周りの人たち、そして次世代のために、地球のために。サステナブルな企業の在り方を一緒に考えてみませんか?」
October 30, 2020 at 02:00PM
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